2015年03月11日

「うなじまで、7秒」冬コミペーパー

こちらは冬コミのペーパーになります。
冬コミから春ガーデンまではtiti祭りだったらしく。ふう。
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 成田国際空港。佐々木伊織は到着ロビーで、貴船の乗ったドイツからの便が十五分早く着いたことを確認する。今日、貴船は海外出張から帰国する。迎えに来るとは伝えていない。さぞかし驚くことだろう。きっと、もうすぐ出てくる。彼に会える。思うだけで知らずに微笑んでしまう。
「あ……」
 貴船がいた。彼は目立つ。シャンパンカラーの髪と際立つ美貌。スーツをかっちりと着こなしている。
 伊織は今まで、貴船のことを完全に白人系の顔だと思っていたが、こうしておおぜいの外国人の間にいるとそれとも少し違うのだと感じる。
 彼の半分を占める日本人の血がごくわずかに滲み出ていて、親しみやすさとエキゾチックさを同時に体現している。
 人混みをするりとかわして、貴船がロビーに出てきた。
 自分の視力がいいことを伊織は感謝したくなる。「俺の貴船」はなんて見目麗しいのだろう。たっぷりと見とれることができる。
 動作から、彼が携帯の電源を入れたのがわかった。慌ててここにいることを電話しようとしたのだが、彼が自分を見ている気がして手を止める。
 いや。よもや、わかるまい。自分は黒い髪に黒い目。つまりはごく一般的な日本人の風貌をしている。さして体格がいいわけでもない。前に陣取っている恰幅のいい紳士の陰にほとんど隠れてしまっている。だが、貴船は、スーツケースを引いたまま、まっすぐに伊織を目指してくる。その目が見つめているのが、自分以外だなどとはもはや信じられない確かさで。
「ああ、伊織さん」
「……貴船」
「迎えに来てくれたんですね」
 彼はまだ少し、日本語が発音しづらそうだった。それが拙くてとてもかわいらしい。
「びっくりしました」
 驚いたのはこちらのほうだ。
「よく俺がわかったな」
 心底感心して言うと、彼は言った。
「あなたは、とても目立つので」
「は?」
 そんなことはないだろう。貴船に比べれば人混みにまぎれていたはずだ。
「本当ですよ。僕に会える嬉しさで輝いているあなたを見つけることは、いともたやすいことでした」
 身悶えたい衝動を伊織はこらえた。
「え、どうしたの、伊織さん? 頭でも痛いの?」
 心配そうな貴船の声。
 伊織は必死におのれを取り戻そうとする。久々に会って話をして、頭のねじが吹き飛びそうになっているが。しっかりしろ、俺。いつもの貴船じゃないか。
「しばらくぶりなので……おまえの言葉に戸惑っているんだ」
 伊織が訴えると、彼は笑った。
「じゃあ、また早く慣れてくださいね。僕に」
「ああ」
 手を差し出す。
「スーツケースは俺が引こう」
「いいですよ。そんなに重くない」
「長旅で疲れているだろう。よこせ」
 飛行機には慣れていますから、と、貴船は遠慮したけれど、結局伊織が粘り勝ってスーツケースを引いた。大丈夫なのにと貴船は言っていたけれど、やはり疲れていたのだろう。並んで席を取った列車が走り出すしてしばらくすると、こちらに寄りかかって眠り始めた。
 そのぬくみが心地よくくすぐったい。
 隣を見ると彼の唇がほんの少し、ひどく無防備に開いていた。不意に伊織は、自分のシャツの前をはだけて彼の唇の隙間に乳首を押し込み吸い付かせたいという衝動に駆られる。
 が、すぐにその欲望を打ち消して伊織は一人で赤面した。これは貴船には絶対に言えないな、と内心で呟く。
 貴船が家に来たら、キスをしよう。お帰りなさいと抱きしめてやり、風呂に入れてごはんにする。そしてベッドで思い切り甘やかしてやりたい。
 くん、と、彼の匂いをかいで、それが自分の元に再びきちんと帰ってきたことを、誰にともなく伊織は感謝した。




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 …………そんなことを言っても伊織は貴船に「おっぱいあげたい妄想」を聞き出されてしまうと思います。
posted by ナツ之えだまめ at 07:10| Comment(0) | うなじまで、7秒-番外編
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